シリコンバレーに駐在して1〜2年目のころ、私は、海外パートナー企業のプロジェクトマネージャーに、1通のメールを送りました。スケジュールの都合で、「明日までにレポートを出してほしい」と伝えたかっただけです。ところが、返ってきたのは、クレームでした。原因は、英語の「命令形」に近い、私の書き方にありました。
この連載では、駐在1〜2年目と、駐在前の海外出張で冷や汗をかいた、4つの失敗を、3回に分けて書きます。第1回は、メールです。
- 「明日までにレポートがほしい」を、”You must…” や “I want…” で書いたら、相手の機嫌を損ねた
- 相手は、「私たちは下請けではなく、パートナーだ」と受け取った
- 依頼のメールは、”Could you please…?” のようにやわらかく書き、”Hi” と “Thanks” を添えるようにした
※これは私の体験談です。言葉づかいの感じ方は、相手や会社の文化によって違います。
どんなメールを送って、何が起きたのか?
相手は、シリコンバレーにある、海外パートナー企業のプロジェクトマネージャーでした。私は、「スケジュールの都合上、明日までにレポートを出してくださいね」という気持ちで、次のように書きました。
| 私が書いた英語 | 言いたかったこと |
|---|---|
| You must send the report by tomorrow. | 明日までにレポートを送ってください |
| I want the report by tomorrow. | 明日までにレポートがほしい |
書いたのは、このどちらかでした。私の頭の中は、「お願いしますね」という軽い気持ちです。でも、相手の反応は違いました。機嫌が悪くなり、「私たちは下請けではなくパートナーだ。なぜ、そんな命令をされないといけないんだ」というクレームになりました(言葉は、記憶をもとにした再現です)。関係は、悪くなってしまいました。
なぜ、命令のように聞こえたのか?
日本語なら、「出してくださいね」と書けば、お願いの気持ちが伝わります。でも、英語で “You must…” と書くと、「あなたはこれをしなければならない」という、強い響きになります。”I want…” も、「私はこれがほしい」と、自分の希望をそのまま言う形です。
一般に、英語の依頼は、”Could you…?” や “Would it be possible to…?” のように、相手に聞く形にして、やわらかくすることが多いとされます。中学校で習う単語だけで書いた文でも、相手との関係によっては、きつく聞こえる。私は、この日、それを学びました。
あとから知った、やわらかい言い方は?
今なら、次のように書きます(これは、あとから整えた英語です。当時の私の英語ではありません)。
| 場面 | あとから整えた英語 |
|---|---|
| 明日までにお願いしたい | Could you please send the report by tomorrow? |
| 送ってもらえるとうれしい | It would be great if you could share the report by tomorrow. |
| できそうか、聞きたい | Would it be possible to send the report by tomorrow? |
| 文頭のあいさつ | Hi (相手の名前), |
| 文末のお礼 | Thanks! |
“Could you please…?” は、直訳すると「〜していただけますか?」です。「お願い」の形になるので、相手は、断る余地を感じられます。
この失敗のあと、何を変えたのか?
- 英語にも「丁寧語」があると知り、依頼のメールでは、”Could you~?” や “Would it be possible to~?” を使うようにした
- チャットでも、無機質な1行にしないで、”Hi” と “Thanks” を必ず添えるようにした
- メールは、要件を箇条書きにするだけで終わらせず、宛名のあとに “Hope you’re doing well.” と一言入れ、依頼には “Could you~” のような、やわらかい言葉をはさむようにした
どちらも、難しい英語ではありません。英語力というより、「相手にどう聞こえるか」を考える習慣が、足りなかったのだと思います。
まとめ
| 場面 | 起きたこと | 次から変えたこと |
|---|---|---|
| パートナー企業へのメール | 命令のように聞こえて、クレームになった | “Could you~?” を使い、”Hi” と “Thanks” を添える |
よくある質問
英語のメールで、”must” や “want” は使ってはいけませんか?
使えない言葉ではありません。ただ、私は、相手に依頼する場面で、強く聞こえて失敗しました。依頼のときは、”Could you…?” のような形を選ぶと、安全だと感じています。
チャットでも、丁寧に書くべきですか?
私は、短い連絡でも、”Hi” と “Thanks” を添えるようにしてから、やり取りが穏やかになったと感じています。ただし、相手や会社によって、感じ方は違います。
- 第1回 命令のように聞こえたメール(この記事)
- 第2回 「I’ll do my best」と「Yes」が、約束になった
- 第3回 会議で黙っていたら、「同意した」ことになった
※この記事は、私の仕事の体験をもとにしたものです。会社名や、個人が特定される情報は書いていません。
私が何者で、どんな経緯で英語をやり直しているかは、運営者情報に書いています。






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