仕事で使う英語

稟議を英語でどう説明するか|「internal approval process」で失敗した駐在時代

シリコンバレーの会議室で、ホワイトボードの Ringi・Nemawashi・Dejima を説明する男性のイメージ(AI作成)

シリコンバレーに駐在していたころ、現地のスタートアップに、日本本社の意思決定の進め方を説明する場面が、数え切れないほどありました。そのたびに、「なぜ日本は、決めるのに3か月もかかるんだ?」という、苛立ちの言葉に向き合いました。

最初、私は「稟議」を「internal approval process」と訳していました。これは、失敗でした。この記事は、その失敗と、そのあとに変えた説明の仕方をまとめたものです。

※アイキャッチ画像は、イメージです(AIで作成。写真に写っている人物は、実在の人物ではありません)。

この記事で分かること:

  • 「internal approval process」と訳すと、なぜ伝わらないのか
  • 日本語の言葉を、そのまま英語で使うときの型
  • 稟議・根回し・出島を、英語でどう説明するか
  • どんな日本語なら、そのまま使ってよいか

「internal approval process」と訳すと、なぜ伝わらないのか?

私が「internal approval process(社内の承認手続き)」と言うと、相手には、「承認が遅い会社」としか伝わりませんでした。そして、「じゃあ、早くしてくれ」で、話が終わってしまいます。

稟議は、承認の手続きであると同時に、関係者に書面を回して、あとから誰も反対しないようにするための仕組みです。この「なぜ時間がかかるのか」の部分が、訳語からは抜け落ちてしまいます。

日本語の言葉を、そのまま英語で使うには?

途中から、私は、日本語の言葉をそのまま使って、一言の説明を添える形に変えました。型は、次のとおりです。

[日本語の言葉], which means [短い説明], is [自分の主張].

守っていることは、3つあります。

  1. 説明は、一言で切る。説明を2文、3文と続けると、話の本筋が止まります
  2. 説明のあとに、必ず自分の主張を続ける。説明だけで終わると、「日本の紹介」で終わってしまいます。目的は、自分の言いたいことを通すことです
  3. 説明するのは、初めて使うときだけ。一度説明したら、そのあとは説明なしで使います。繰り返すと、相手を見下しているように聞こえます

稟議・根回し・出島を、英語でどう言うのか?

私が使うようになった言い方です。

日本語英語
稟議Ringi, which means a written approval that circulates through every stakeholder before a decision, is not a delay. It’s how we make sure nobody blocks it later.
根回しNemawashi, which means informal groundwork before a formal meeting, is where the real decision happens.
出島Dejima — our name for a separate unit built outside the main organization, after the island in Nagasaki — lets us move at a different speed.

日本語にすると、次のような意味です。

  • 稟議は、遅れではありません。あとから誰にも止められないようにするための方法です。
  • 根回しは、正式な会議の前の下準備のことで、本当の決定は、ここで行われます。
  • 出島は、本体の組織の外に作った別の部署のことで、そのおかげで、違う速さで動けます。

稟議の言い方に変えてから、会話が変わりました。「遅い会社」ではなく、「違う考え方で動いている会社」として、聞いてもらえるようになったからです。出島の例のように、名前の由来を一言添えると、相手が興味を持って、話が広がることもあります。

どんな日本語なら、そのまま使ってよいのか?

私の基準は、「英語に、一語で対応する言葉があるか」です。あるなら、訳したほうが早いです。ない、または、訳すと一番大事な部分が抜け落ちるなら、日本語の言葉に、一言の説明を添えます。

ただし、どの言葉が英語として広く通じるかは、言葉によって違います。たとえば、kaizen は、英語の辞書(Wiktionary: kaizen、2026年11月3日に確認)に、「継続的な改善」を意味する英語として載っています。一方で、ringi と nemawashi は、同じ辞書では、英語の言葉としては確認できませんでした。この2つは、初めての相手には、必ず説明を添えて使います。

よくある質問

相手が知らない日本語を使うのは、失礼ではありませんか?

説明を添えれば、問題ないと考えています。訳語で誤解されるほうが、リスクが大きいです。ただし、説明なしで続けて使うのは、避けています。

説明は、どのくらいの長さがよいですか?

一息で言える長さです。ringi の例の「which means…」くらいが、上限だと感じています。それ以上、説明したいときは、いったん文を切って、相手の反応を見ます。

私が何者で、どんな経緯で英語をやり直しているかは、運営者情報に書いています。